Section 01
「本物って何だろう」から始まった
Q.しめ飾りを作るようになったきっかけを教えてください。
長く花やデザインに関わる仕事をしてきた中で、あるとき「お正月飾りの本物って何だろう」と思ったんです。そこから、しめ飾りについて調べ始めました。
すると、藁を綯う技術や結び方だけではなく、その背景に日本の文化があることを知りました。どんな意味があって、どんな思いで作られてきたのか。知れば知るほど、もっと知りたくなったんです。
気がついたら、その世界に夢中になっていました。
Section 02
綯う前に、心を整える
Q.制作するときに、一番大切にしていることは何でしょうか。
先生から教えていただいたのは、技術だけではありません。日本の文化や、どんな気持ちで藁を綯うのかということも教えていただきました。
心を集中して、感謝の気持ちで綯うこと。しめ飾りは、その「心持ち」が一番大切なんだと学びました。だから、綯い始める前には、いったん気持ちを整えるようにしています。
感謝の気持ちで綯っていると、自分自身も幸せな気持ちになってくるんです。そして、どなたかに使っていただいて、役に立つことにも幸せを感じます。
一番大切なのは、感謝の気持ち。「ありがとう」という心だと思います。
福嶋久美子
Section 03
一本の藁から、作品は始まっている
Q.作品に使う藁は、どのように選び、整えていますか。
いい藁を探すところから、制作は始まっていると思います。私は農家の出身ではなく、もともとは田んぼとのつながりもありませんでした。だから、最初は藁を探すこと自体が大変でした。
でも、その過程で、丁寧に育てている方や、昔からのものが残っている場所に出会えたことは、とても楽しかったですね。そうした出会いを通して、この文化をつないでいきたいという気持ちも強くなりました。
制作に入る前には、一本ずつ状態を見ながら、使う部分を選んで手で整えます。作品をきれいに作るためには、その前の素材をきれいにすることが大切なんです。
せっかく育てていただいたものなので、できるだけ無駄にしないようにしています。素材への感謝は、そういう準備の時間にもつながっています。
Section 04
原点を大切にしながら、今のかたちへ
Q.伝統的なしめ飾りでありながら、現代的な表現も感じます。
伝統だから変えてはいけない、とは思っていないんです。もちろん、原点は大切です。どういう意味があるのか、昔の人がどんな気持ちで作っていたのか。そこを知ることは欠かせないと思います。
そのうえで、伝統や文化は、変化していかないと次の時代につながっていかないとも感じています。だから、デザインを変えたり、現代の材料を取り入れたりしながら、表現の幅を広げています。
今の人が、自分の暮らしの中で自然に触れられるものにしていきたいんです。受け継いだ意味や心を大切にしながら、今の暮らしにつながるかたちを考えています。
Section 05
心を寄せたい場所に、飾ってほしい
Q.しめ飾りは、暮らしの中でどのように楽しめばよいでしょうか。
「玄関でないといけませんか」と聞かれることがあります。でも、自分のお部屋でも、リビングでも、自分が大切だと思う場所でいいと思っています。
作品を飾ることで、そこに少し心を寄せる。作品の前では笑顔でいようとか、ありがとうと思おうとか。そんなきっかけになったら、一番嬉しいですね。
若い方にも、もっと身近に感じていただきたいです。背景を知っていただくと、感謝の気持ちや、身の回りのものを大切にすることなど、今の暮らしにも通じるものがあると思います。
Section 06
お客様に届いて、初めてつながる
Q.福嶋さんにとって、作品を届けることにはどんな意味がありますか。
私一人では完成しない、という感覚があります。藁を育ててくださる方がいて、ここまで素材がつながってきて、私がそれを作品としてつないでいく。
でも、私のところで止まってしまったら意味がないんです。最後にお客様のところへ届いて、飾っていただいて、そこからまた何かを感じてもらう。そこで初めて、つながるのかなと思っています。
私のところで止まっても何の意味もない。お客様のところへ行って初めてつながる。
福嶋久美子
一本の藁から生まれた作品が、誰かの暮らしへ届く。福嶋さんの話から見えてきたのは、しめ飾りが結ぶ、人と人のつながりでした。
作品を眺めるとき、そのかたちとともに、素材を育てた人や、手を動かした作家の思いにも目を向けてみてください。
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